Artist Talk - Clay Arlington

長く続いたロックダウン後、EURO2020の乱痴気な熱気に沸くロンドンで禅的な暮らしを営むクレイ・アリントン氏。淡々と、情熱的な作品をマルチに作り続けるクレイに聞いた、日々のこと、創作のこと。


─ロンドンは1ヶ月近く乱痴気ぶりが続いているようですが、いかがお過ごしでしたか?

Clay Arlington氏 (以下、「CA」) 極々静かな暮らしをしてた。この1年、特に大きな変化もなく、いつもの日常を淡々と。


─新型コロナの影響で世界中の多くの人に大きな変化があったと思うのですが。

CA イギリス政府の対応は最低だけど、自分の中で特に大きな変化はないよ。コロナは自然の摂理の一部なんだと思う。もちろん、少し混乱はしたけど、基本的にはそれまでと変わらない心持ちでいるね。社会的な大きなうねりとか、リモートなどITを利用した生活・仕事の仕方の変化で行動自体は変わったけれど、自分の核みたいなものが変わることはなかった。みんなも、あまり気にし過ぎない方がいいんじゃないのかな。気にしても、どうにもならないこともあるから。


─ずいぶんと達観した境地ですね。誰か、お師匠さんなどいるのでしょうか?

CA 『ザ・ラリー・サンダースショー』のアーサーが僕のヒーローだね。彼は、然るべき時がきた時に戦う術を知っている人だから。


─懐かしい! 久しぶりに観てみよっと。


ダンサー、日本文化、アウトドアキモノ


─そもそも、どうしてアーティストになろうと
思ったのですか?


CA 自分のことをアーティストだとは思ってないよ。自分はものを作ったり、イメージを作ったりするのが好きな人間だなだけで、アーティストではない。「アーティスト」ってごく稀な条件が揃った時だけに当てはまる言葉で、少し使い古された言葉だと思う。いわゆる「アーティスト」という言葉を自分に当てはめるのは傲慢だと思うし、その呼び名自体、再定義する時期がきているのかなとも感じているよ。



─なるほど。では今回、〈loosejoin s〉の22
SS「Come Toge her」用に提供してくれた作品は、どんなコンセプトで作ったものだったのですか?

CA 実は、ダンサーの友だちと一緒にデザインしたんだよね。なんとなくだけど、彼らは自分の体で喜びを生み出しているような感覚があって。ずいぶんと長い間屋内に閉じこもらざるを得なかったからか、自分の体を開放したかったのかもしれない。



─確かに、かなりフィジカルな感じがしました。そういえば以前、日本のアニメ作品の『アキラ』をモチーフにした作品を作っていましたよね。

CA
日本のカルチャーがとても好きだからね。奇妙でいて優雅な、暴力的であり紳士的な、他にはない特有のトーンを感じるんだ。他のカルチャーシステムより強く影響を受けているかはわからないけど、一つの要素として自分の作品の中に確実に存在しているかもしれない。僕は、必要に応じていろんな文化的要素を破壊して再構築することで作品を作っているから。三島由紀夫の『仮面の告白』、ヒロミックスの『光』、勅使河原宏の『他人の顔』なんかも好きだね。


─なかなか渋いチョイスですね。。要素を再構築したりという観点から言うと、クリエイティブディレクターとして、プロジェクトでチームを組んで作品を作ることも多いと思いますが、最近注目している「アーティスト」はいますか?

CA
ロンドンの、ルーカス・ドゥピュイかな。手法がかなりマニアックなんだけど、なんか親近感と違和感を同時に覚えることができるんだ。


─知らなかったので、作品を観てみようと思います。クレイさん自身かなりマニアックな手法でデザイン、ドローイング、ディレクション、プロデュースと、多岐にわたる活動をされてますよね。

CA そうだね。エディティングの感覚は大好きだね。でも、シンプルに描くことも好きだけど。


─ところで最近、ハマっているものとかあります?

CA
蛇とマスク。あ、あとはアウトドアキモノにハマっているかも。それこそ日本のキャンプブランド〈スノーピーク〉ので、ロンドンのショップのサンプルセールに行った時に見つけたんだ。特にキャンプが好きなわけじゃないけど、茶道の野点とか、何か自分の中に新しい変化をもたらすかもしれないと思ったんだ。


─クレイさんとの会話は、禅問答みたいでとて
も面白かったです。僕たちも、そんな境地に至れる
ように、精進していこうと思います。


Published: almanacs Vol.01 (2022SS)

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